• 2019年度
  • 最優秀賞

ICT舗装工事の活用と課題について

株式会社 エコワーク  小林剛 大坪将

1.はじめに

近年、生産性向上や担い手不足解消のため、建設分野においてICT建設機械、機器を活用した工事が推進されている。平成29年より舗装工での取り組みが始まり、ICT技術を活用した基準類が整備され、今後、多くの舗装工事で実施されていく予定である。本工事は、ICT活用工事の対象外ではあるが技術提案により、ICT活用工事(舗装工)の実施内容、考察を報告するものである。

2.工事概要

工事名
平成30年度 蓬莱橋周辺事業
工事箇所
島田市宝来町地先
工期
平成30年12月27日~平成31年3月13日
発注者
島田市役所
工事内容
施工延長L=115m 施工面積A=1670㎡
工種
路床不陸整正 上層路盤 1670㎡
表層 1670㎡
土工 280㎥ 縁石 266m

3.使用機器

  • ①TLS(地上型レーザースキャナー(路床整正、上層路盤、表層出来形測定))
    測定装置名称:MS60  メーカ:Leica
    ソフトウェア 名称:TREND-POINT  メーカ:福井コンピュータ 
  • ②TS(自動追尾型トータルステーション(路床整正、上層路盤 ICT建設機械施工))
    名称:SPS630  メーカ:Trimble
    マシーンコントロールシステム搭載型グレーダー
    名称:GCS900  メーカ:Trimble

4.実施内容

  1. 3次元設計データの作成
  2. ICT建設機械施工 (路床不陸整正、上層路盤)
  3. TLSを用いた出来形管理(路床不陸整正、上層路盤、表層)
    TSを用いた出来形管理(上層路盤、表層)
  4. 3次元データの納品 ※静岡県ポイントクラウドベースに登録

5.舗装工事におけるICT 技術の課題

実施した路盤工におけるマシーンコントロールの特徴については、多くの工事で実証されているため、今回はTLSによる3次元出来形管理の課題について列記する。

(1)測定、データ処理時間の課題

・スキャン距離30m測定、1回の測定時間約10分、工種毎の測定に精度確認試験を含め3時間を要した。※TS測定は8測点で、30分程度であった。

・表層の測定では、降雨にさらされて水滴が残っている期間、レーザーの乱反射により測定しづらくなり、再測定した。

・スキャンの点群データが膨大であるため、わずかな範囲であってもハイスペックのPCが必要なり、データ処理に時間(2日間)を要する。

・舗装工事の90%以上を占める交通規制を伴う即日復旧工事での活用は、測定(スキャ二ング)時間を要するため困難である。

(2)切削オーバーレイ工事でのICT工事の活用課題

・活用内容に路盤でのICT建設機械(グレーダー、ブルドーザ)による施工の記載はあるが、切削オーバーレイでの記載がない。

(3)規格値の設定課題

・管理ポイント以外の箇所も測定するため、規格値を満足するための施工精度が要求される。特に上層路盤の平均の規格値-10㎜、表層の平均の規格値-3㎜が規格値であり、規格値50%以内で施工することは容易ではない。

6.ICT舗装工事の普及率を拡大に向けての改善案

(1)使用者サイド測定データ処理の時間短縮

ハードウェア、ソフトウェアの性能向上、開発を期待したい。(測定機器の購入時、政府からの補助金制度の確立)

(2)切削オーバーレイ工事でのICT工事の活用

・ICT建設機械(MC切削機等)の追加が望ましい。

・TLSでの測定(起工測量、路面切削)時間を要するためTSで測定、表層のみTLSで測定を採用する。※路盤、表層はTSで併用して測定、TLSの測定時間の20%で測定。

・官公庁によっては、標定点が整備されていない路線があるので、標定点の一元化が必要。

(3)規格値、対象施工面積の改定

・現在、国土交通省の土木施工管理基準の規格値に準じているが、他の官公庁も数量に応じた規格値を設け、また上層路盤工、表層工の規格値の改定を希望する。(図-6)

・対象施工面積が国土交通省10,000㎡以上、静岡県2,000㎡以上であるが、対象面積(施工者希望型)の緩和が望ましい。※国交省関東地方整備局は3000㎡以上対象 施工者希望型Ⅱ型

(対象面積改善案)

国土交通省2,000㎡以上、静岡県1,000㎡以上。
総合評価、工事成績の加点評価、必要経費の変更計上の対象。

7.おわりに

今回、ICT舗装工事の活用内容と課題を検討することができたが、今後ICT舗装工事を普及するのには、活用方法と機器等の進歩が求められる。普及率が上がってこなければ、これから直面していく課題の労働力不足の解消、生産性の向上には繋がらないであろう。

また、若手技術者、未経験者や女性社員が活躍できる場として期待される技術である事から、今後、官民一体の建設業界全体で推進していかなければならないと考えられる。