株式会社エコワーク 小林 剛
1.はじめに
本工事は県道伊久美藤枝線で、島田市伊久美地内と藤枝市街を結ぶ主要路線の舗装打換え工事である。施工条件は、車道の平均幅員が3.5mと狭く、片側交互通行規制での施工が、不可能であった。施工箇所は山間部の農作地帯であり、農作業の支障を最小限となる様に、昼間作業の時間帯通行止規制による施工となった。
道路利用者及び沿道住民の安全性、快適性に直接影響を与えることから、早期に完成させる為に施工方法、品質確保、工程管理についての検討が必要であった。
2.工事概要
- 工事名
- 平成29年度 伊久美藤枝線 防災・安全交付金(県道舗装修繕)工事
- 工事箇所
- 藤枝市滝沢地内
- 工期
- 平成29年8月3日~11月30日
- 発注者
- 静岡県島田土木事務所
- 工事内容
- 施工延長L=265m
施工面積A=970㎡ - 工種
- 掘削残土処分 210m3
舗装版破砕、下層、上層路盤、表層 970㎡ - 舗装構成
3.事前測量
レーザースキャナーで事前測量を実施(今回は着手前・完成に測定)
・計測対象に触れることなく地形や構造物の3Dデータを取得可能なノンプリズム計測機器。
・取得した点群データから3Dモデルを生成し縦横断図を作成することができる。
・計測後に必要な断面を検討が可能。データ処理によりリアルな3次元設計検証処理が可能。
・作業時の安全性の向上。
4.施工条件
- (1)交通規制
- 昼間時間帯通行止規制(迂回路無し)
規制時間 - (2)施工幅員
- 施工幅 平均 3.5m/最小幅 2.8m 最大幅 4.5m
- (3)縦横断勾配
- 平均縦断勾配 6% 横断 2%
- (4)沿道営業店舗
- 営業時間は、駐車場の出入り、誘導確保
- (5)地元要望
- ・施工日数の短縮・緊急車両の対応
- 工種
- 掘削残土処分 210m3
舗装版破砕、下層、上層路盤、表層 970㎡
5.現場における問題点
- (1)設計工法での時間制約について
- バックホウによる舗装版取壊し(t=8㎝)、掘削(t=22cm)、現地盤から計30㎝の深さとなり、規制時間内での掘削~下層路盤~開放の施工サイクルでは、交通開放は困難である。
作業の効率化による工事日数の短縮が求められる。 - (2)路盤作業について
- ・施工条件の制約の限られた時間の中で、出来形、品質を確保するのは、容易ではない。施工方法、機械の選定が重要となる。
- (3)表層作業について
- ・表層を施工するにあたって、開放時間までに開放温度に達しない可能性が懸念される。開放時に施工継目が発生するので平坦性が低下しやすくなる。
6.問題点の改善策と実施結果
- (1)工法・使用機械の変更により工期短縮・品質向上
- ・舗装版取壊し、掘削を切削機で施工する。
(施工日数の短縮及び時間帯での交通開放に優れる) ※表-2参照
・BH取壊しによる場合は、既設路床面を乱してしまう。よって、切削機による舗装版取壊しに変更して、既設路床面を乱さず、ほぐさない安定した状態で施工することにより、路床の密度も確保され、上部に構築される舗装帯の品質も確保される。
- (2)路盤作業の品質・施工性向上
- ・下層、上層路盤工では情報化施工を採用。 ※事前測量(レーザースキャナ)の3Dデータを使用
トータルステーションと連動して設計基準面で施工。機械をリアルタイムに自動制御して施工を行う技術。仕上り精度の向上と作業時間の短縮。水糸検測要員不要、安全性向上。
・水平振動付きマカダムローラを使用
従来のローラと比較して所定の締固め密度を早期に確保できる。
- (3)表層作業の品質・施工性向上
- ・強制冷却装置付タイヤローラの使用(二次転圧終了時から開放温度に達するまでの時間短縮)
・効率の良いタイムサイクルの作成(施工継目の削減)
予定時間サイクルで施工実施。平坦性試験は1.6㎜と規格値を満足しているが良好の結果が得られなかった。山間部の縦断勾配の急な区間や曲線の多い道路という条件下でのAFの設定速度、転圧速度が速かったことが主な原因として考えられる。
7.おわりに
本工事のように養生時間が十分に確保できず、交通開放が余儀なくされる現場において、以上の改善策は、施工方法、品質確保、工程管理の向上に極めて有効である。
レーザースキャナーでの管理については、現段階では測定に時間を費やしてしまうデメリットもあり、即日復旧工事の現場での採用は困難である。しかし、規制を伴わない新設工事の採用には、大いに活用していく可能性を感じた。
当初設計積算金額と比較すると切削機使用時の変更原価が大幅に上回った。しかし、工期短縮によりガードマン、不陸整正費用が低減の他に設計価格が不明な道路利用者及び沿道住民への車両走行費用、時間的損失費用、環境費用、心理的損失費用等も、低減している。また利用者便益の早期発現、ならびに社会的損失費用の低減効果もあった。以上のことを踏まえてトータルコストは、変更(改善策)後の方が経済効果に優れていると思われる。