鈴与建設株式会社 清水紀圭
1.はじめに
本工事は新興津国際海上コンテナターミナル拡張に伴うコンテナヤードの新設工事である。
門型クレーン走行路及びコンテナ蔵置場には、プレキャストプレストレストコンクリート版(以下PPC版)を配置し、版下に下層路盤t=15㎝、路床盛土t=35~55㎝、セメント安定処理t=100㎝の舗装構造となる。特に門型クレーン走行路は、自重140t の門型クレーンが頻繁に走行するため、舗装基盤である路床盛土・下層路盤は、長期にわたり品質を保持する上で重要な役割を持つ。本工事ではこれらの課題に対し、情報化施工技術を採用し品質確保に努めた。
本報告は、本工事で採用した情報化施工技術から得られた効果と、今後の課題について報告するものである。
2.工事概要
- 工事名
- 平成27年度 新興津ふ頭用地整備事業(清水港)
コンテナヤードPPC版製作・据付工事(その2) - 工期
- 平成27年10月 1日~平成29年3月15日
- 発注者
- 静岡県清水港管理局 整備課
- 工事概要
- コンテナヤード整備工事 第6・7レーン
施工延長317m、PPC版製作・据付323枚
3.課題の抽出と対応策の検討
工事に先立ち実施した設計照査により、以下の課題を抽出し対応策を検討した。
・PPC版の据付精度が±10㎜のため、下層路盤の精度は規格値の50%以下が要求される。
・PPC版の据付作業はクローラクレーンで路盤上を移動しながら、路盤に直に据付ける。また、路床盛土の盛土厚が均一でないため、不等沈下のない堅固な盤構築が要求される。
・施工面積が約16,000m2と広く、ヒューマンエラーに起因する転圧不足が懸念される。
上記課題に対する対応策として情報化施工技術に着目し、施工精度への対策として、3次元設計データに沿って重機を自動制御するマシンコントロールを採用。締固め度等の施工品質への対策として、品質を可視化できる締固め管理システムを採用し、対策を図った。
4.情報化施工技術の選定
採用したマシンコントロール及び締固め管理システムの基準局は、日々のキャリブレーション手間を考慮し、当現場では主に、GNSS (全球測位衛生システム)を用いたシステムを採用した。
また、各工程の選定基地局、適用重機等を表-1に示す。なお、締固め管理システムは管理要領に準じた試験施工の結果、盛土材料・路盤材料ともに、タイヤローラーによる『転圧回数8回』とした。
5.情報化施工の活用効果
- 1)施工精度の確保(マシンコントロール)
- マシンコントロール採用効果の確認として、基準高による施工精度の検証を行った。表-2 のとおり何れも社内規格値の50%以内を確保し、規格値の観点から考察すると、非常に良好な結果を得ることができた。
しかし、GNSS基準局によるマシンコントロールはGNSS信号受信時の誤差により、キャリブレーション時や施工時にも誤差が発生することが判明した。このため、GNSS基準局によるマシンコントロールでは、下層路盤の要求精度が確保できないと判断して、下層路盤工程は、安定した信号が受信でき、誤差の少ないTS基準局によるマシンコントロールに変更した。
施工性や精度等、様々な要素を考慮してシステムの選定をする必要があったといえる。 - 2)施工品質の確保(締固め管理システム)
- 締固め管理システム採用効果の確認として、転圧回数管理と併用して、密度試験により施工品質の検証を行った。なお、路床盛土においては管理要領上、原則密度試験を不要としているが、今回は効果検証のため、試験頻度を減らして密度試験を実施した。
表-3 のとおり、試験施工結果と比較すると、路床盛土において 2%程度平均値の低い結果が表れたが、何れも規格値は満足した。このことから施工箇所全域の施工品質、システムの有効性が確認されたといえる。
また、今回は管理要領に準じて、搬入材料の含水比試験を搬入日毎実施したが、公的許可を受けた材料については、日々の含水比管理は不要と考える。 - 3)施工効率等の比較
- 表-4 のとおり、計画施工量と比較して路床盛土は1.1倍、下層路盤は約1.2倍施工効率が向上した。
また一般と熟練のオペでは、条件の相違はあるものの、施工中の観察や施工量の比較等からも熟練のオペの方が施工効率は向上した。さらに表-2、3の品質の計測値から、施工効率と品質は比例すると考えられる。
6.情報化施工技術の課題
情報化施工の活用により様々な効果を得られる反面、以下のような課題もあると考える。
・現場条件に即した情報化技術の選定。(施工性、コスト等を考慮したトータルプランニング)
・施工現場に即したシステム運営。(実情に合わせた管理要領の更新等による生産性の向上)
・オペレーターのレベルに左右されない情報化技術、システムの構築
また、業界として次世代への技術の伝承や担い手育成を行うことも課題と思われる。
7.おわりに
国土交通省においては、平成29年3月からICT舗装工が新たに策定され、第1フェーズとして路盤工への適用を推進しており、i-constructionの流れは留まることなく進むと思われる。我々技術者は多様化するニーズを的確に捉え、柔軟な思考をもって、情報化施工技術の本来の目的である業界全体の生産性の向上を図るべく、これからの工事に取組む必要があると考える。