臼幸産業株式会社 原田 良亮
1.はじめに
本工事は、一般県道足柄停車場富士公園線で、須走5合目に向けて延長12kmの富士山登山道で、近年観光バスの往来が非常に増加し、従来からの道路幅員では車両のすれ違いができずカーブ手前で交通処理が必要な路線である。そこで今回の工事で、既設の道路幅員を拡幅し車両の安全通行を確保する事を目的に計画されましたが、計画縦断勾配が10%・横断勾配は6%で、尚且つ180°転換する様な道路構造となる為、どの工種においても施工条件は非常に厳しい条件の工事でした。
2.工事概要
- 工事名
- 平成27年度 足柄停車場富士公園線
安全・安心緊急道路対策事業 - 工事箇所
- 静岡県駿東郡小山町須走地内
- 工期
- 自 平成27年 9月 2日
至 平成28年 5月29日 - 発注者
- 静岡県沼津土木事務所
- 工事内容
- 施工延長 L=250m
施工面積 A=2500㎡
3.課題・問題点の抽出
発注者から示された設計縦断勾配は10%・横断勾配は6%でした。通常の道路構造でれば施工可能な範囲であるが今回の現場は図-3に示すとおり、道路構造が半円となる形状であった為、設計条件を踏まえ道路勾配を検討する必要があった。
①縦横断勾配の検討
②舗装品質確保の為の施工方法の検討
①縦横断勾配について
縦断勾配については、既設の起終点の高さに擦り付けの計画の為、区間内をほぼ一定の勾配としているので問題となる点は無かった。しかし、横断勾配については道路構造令第三種道路で6%で計画された。この設計はイン・アウトでの高低差が非常に大きいのでイン側の中心で滞留水の発生が懸念される事と、一般車両への横滑り発生を検討する必要があり、横断勾配を最小限の2%に変更する協議を実施した。
②舗装の施工について
下層上層路盤においては、上流側から下流側への施工をする為、骨材の材料分離と転圧不良箇所をなくす為、下層路盤T=25cmを3層仕上げ検討。アスファルト舗装については、アスファルトフィニッシャー6.0m級を配備しより多くの合材をホッパーに貯留し運搬から敷均しまでを一連の流れとなる様、カーブで合材供給ができない箇所についてはタイヤショベルにて積替供給を実施した。転圧においては、カーブ中10tタイヤローラーでは効率よく転圧できない為、小型のタイヤローラーを配備し、最良となる転圧作業を検討。
4.効果検証
①変更協議
横断勾配を6%→2%に変更
図-3の水色着色箇所の滞留水70cm→23cmに軽減
⇒ 通行車両の水没回避
平面線形R13で横断勾配を6%→2%に低減
⇒ 通行車両の走行性確保
②施工方法
路盤工
下層路盤t=25cm 通常2層仕上げ→3層仕上げ
上層路盤t=15cm 通常1層仕上げ→2層仕上げ
⇓
材料分離抑制・締固め密度確保
施工機械の施工時の負担軽減→環境対策
表層
カーブ中の合材供給対策→小運搬対応
カーブ中の転圧対策→小型ローラーの併用
⇓
施工機械の一連作業が可能→環境対策
材料分離抑制・締固め密度確保
5.終わりに
本工事では、当初設計を現場条件や供用開始後の状況を予測し、道路計画を協議変更した結果、発注者/設計者の変更結果に対して期待も強く、変更協議はスムーズにできたが、今回の現場が特殊な道路構造の為、机上では判断できない勾配変化点を予め予測できた事、また、勾配条件から供用開始後の状況を予測できた事が、結果に繋がったと考えられます。施工面では、機械の操作性/作業限界を予測した事で、舗装作業の一連作業性を確保でき特殊地域の道路でも良質な舗装品質を確保できた事は、今後の施工技術向上に繋がっていくと考えます。今後は、今回検証できていない表層の勾配施工時の締固め密度の変位については今後課題として品質向上の要件として研鑽していきたいと思う。