• 優秀賞
  • 平成28年度

舗装補修工事の性能規定について

株式会社 エコワーク  小林 剛

1.はじめに

 近年、公共事業における厳しい予算事情を背景に幹線道路の維持管理においては、より一層のコスト縮減、効率化(長寿命化)を求められています。
そこで、性能規定方式は、発注者が必要とする性能のみを規定し、材料や施工方法等の使用は、従来よりも受注者である民間企業の技術力や工夫等を活かしやすいことから、品質、性能の向上や、コスト縮減及び長寿命化にも寄与すものと期待されている。
今回、性能規定発注方式を採用した、国道362号補修工事について、受注者が提案した舗装構造と施工後評価(問題点、課題)について報告します。

2.工事概要

工事名
平成27年度(国)362号舗装補修(道路維持)工事(舗装打換え工)
工事箇所
榛原郡川根本町上岸地内
工期
平成27年9月30~12月11日
発注者
静岡県島田土木事務所
工事内容
施工延長L=139m
施工面積A=1,080㎡
当初設計
舗装版破砕工t=10㎝  1,080㎡
基層t=5㎝       1,080㎡
表層t=5㎝       1,080㎡



3.性能規定について

本工事の性能規定の項目は、耐塑性変形、平坦性、わだち掘れを規定しており、性能の評価は、静岡県性能規定審査委員会で決議します。
性能評価に使用するデータは、耐塑性変形、平坦性、わだち掘れは受注者が測定したデータを用います。
表-1に性能規定の項目、規定値を示します。
※但し、舗装構造提案については、わだち掘れの項目のみと規定さていました。
※評価結果不適合の場合は、特記仕様書において受注者に回復措置を行わせることになっています。


4.提案内容

本工事のおける、性能規定区間のわだち掘れ対策に主眼を置き、下記の舗装構造を提案し、静岡県性能規定委員会に採用されました。
(1)構造提案の内容 (わだち掘れについて)
a)舗装版取壊しを切削機で施工する。
b)表層部の合材を密粒アスコン改質Ⅱ型を使用する。
C)自然冷却で所定の開放温度に達成できない場合は強制冷却付きタイヤローラを使用する。(※60分経過時で開放温度に達しない場合)開放開放温度を45℃以下とする。
(2)提案理由
a)BH取壊しによる場合は、既設路盤面を乱してしまいます。よって、切削機による舗装版取壊しに変更して、既設路盤面を乱さず、ほぐさない安定した状態で施工することにより、路盤の密度も確保され、上部に構築される舗装帯(基層、表層)の品質も確保されます。
b)表層合材を再生密粒アスコン20mmから密粒アスコン改質Ⅱ型20㎜に変更することにより対流動性対策として効果があり、わだち掘れが抑制できます。
C)対流動性、わだち掘れ抑制効果の為、改質合材を使用します。改質合材は、当初設計で使用されるストレートアスファルトより混合温度、出荷温度が高く設定されています。現場条件やタイムサイクルにより、計画養生時間(90分)では、路面開放ができない恐れがあるため開放温度に達成できるよう必要に応じて冷却装置付タイヤローラを使用する。

5.提案結果と評価




5.問題点と改善策

①わだち掘れが1mm程度の段差が生じた。
(今後の対策)
タイヤローラの転圧終了時に、すじ消しをタンデムローラで仕上げ転圧を実施するのが、段差をなくす有効的な手段と考えられます。

②使用材料の高コスト
(今後の対策)
表層部も再生合材を動的安定度を高める配合設計を立案し、低コストの材料を選択するのが望ましいです。

③平坦性結果が規定値(1.6㎜)の50%以内(0.8㎜)で施工できなかった。
(原因)
a)材料供給時、材料運搬車のブレーキでAFに付加がかかり、微細な段差が発生。
b)スクリードに抱える合材の量が一定でなかったため、敷均し高さが安定しなかった。
c)AFのバイブレーターの強さが弱かったため、初期転圧の転圧減が大きくなり、路面の凹凸ができてしまった。
(今後の対策)
a)ダンプ誘導合図者の配置。(合図者の明確な合図の徹底)
b)AFのスクリードに抱える合材の量を一定
c)AFのバイブレーターの強さの調整と確認
転圧時に凹凸ができないよう、タイヤローラ転圧終了時に、タンデムローラですじ消しの為、仕上げ転圧を実施。

6.おわりに

 当工事において、従来とおりの施工手順を実施すれば、目標が達成できるという検証を行い実証できました。また現場での課題、今後の対策も発見することができました。
今後も、より良い製品を提供するため、この経験を活かし、さらなる技術の研鑚と社内での情報の共有化、継承を通じ、財産として活かせる方法を模索していきたいと思います。