• 平成27年度

浜松環状線 QRP工法における品質の向上

中村建設 株式会社  伊藤 彰記

1.はじめに

本工事は、東名高速浜松ICの浜松・国道1号方面への出口となる浜松環状線での舗装打換え工事である。この道路は、浜松市が管理する主要幹線道路の中でも、1日の総通行車両数3万5千台という最も交通量が多く、最も重要な道路である。
1回目の発注では経済性を優先した舗装構成となっていたため、施工が極めて困難であったことから入札不調となった。このため、設計を見直し舗装構成を変更して再発注された。このような経緯から、この幹線道路補修を、高品質でいかに安全に行うかが求められていた。

2.工事概要

工事名
平成24年度防災・安全交付金(舗装修繕)(主)浜松環状線舗装修繕工事(流通元町工区)
工事箇所
浜松市東区流通元町
工期
H26.1.15~H26.3.24
発注者
浜松市 東・浜北土木整備事務所
工事内容
舗装打換え工事  A= 1,330m2
(片側3車線道路 L=120m 全面打換え)
路面切削工 t=41cm  V=560m3 
基層・上層路盤工 再生大粒径As(30)t=36cm
表層工 密粒As 改質Ⅱ型 t=5cm

3.舗装構成及び問題点

舗装構成は、大型車両交通量 約3,900台/24Hであるから交通区分はN7交通、設計CBR値6%から、必要等値換算厚(TA)は41 cmとなり、図-2の舗装構成で設計されていた。
しかし、急速舗装修繕工法(QUICK REPAIR PAVEMENT)QRP工法が採用されたが、基層・上層路盤工の1日の施工厚さが36cmの2層仕上げとなるため、下記の問題があった。

A)早期開放による合材流動を起因とする、わだち掘れ(品質低下)
B)支持地盤の強度不足による、施工性の低下(区間CBR値7.15)
C)使用機械の選定並びに1日の施工量(施工性・すり付け方法)
D)限られた時間内(21:00~06:00)の間に交通開放させる(タイムスケジュールの確保)
E)36cmを1日に施工しなければ、交通開放できない。(交通渋滞・安全確保)

4.品質向上並びに時間短縮に考慮した点

①施工幅の縮小
片側3車線であるため、基層などは1.5車線(4.5~5.0m)で行うことが通例である。
しかし今回は1車線の3.5mほどで行うことにより、
1.Asフィニッシャーの抱え込み量を少なくすることによる、支持地盤損傷の最小化
(地盤損傷よって、Asフィニッシャーの走行不能になるリスク)
2.Asフィニッシャーのスクリードを広げないため、タブルタンパバイブレーターとなり転圧能力の向上。
3.1施工延長を40m毎としていたが、60mとし施工延長を長くすることによる平坦性の向上
(縦断方向の施工区分 3回 ⇒ 2回)
②横断ジョインント部の工夫
36cmを2層に分けて施工するため、舗設時のスタート台を人力で行うことは、時間ロスとなる。そのため、路面切削を起点部より4mほど後退させて、18cm毎切削することにより舗設準備を軽減し、横断ジョイントのずらしを確実にできた。(図-3)
③縦断ジョイントの工夫
縦断部も打継ぎ目をずらすために、1回目の切削(18cm)を片側15cm多く削り、2回目の位置を正規位置とした。(写真-1)

④水平振動マカダムローラーの採用
転圧機械は水平振動マカダムローラーを採用し、より高い締固めを行うことができた。また1台で2台分の役割を果たすことにより、限られた作業スペースであるため、作業員の安全性も向上した。
⑤中温化合材の採用
再生大粒径As(30)には、施工承諾にて中温化材入りのものを使用し、開放温度を60℃以下と設定した。(工法推奨温度は、70℃以下)

5.結果

QRP工法において施工タイムロスが無く目標温度の60℃以下で、交通開放することができた。
表層工の平坦性・標準偏差は 3車線平均で0.89mmと非常に良い仕上がりとなり(表-1)、検査点数も86点と発注者から非常に高い評価を得ることができた。

6.まとめ

このような交通量が多い幹線道路の規制を伴う、夜間工事での急速舗装修繕工はひとつのタイムロスによって品質に大きく左右されてしまう。そのため、1日のタイムスケジュールどおりに進行することがもっとも大切となる。
大型機械を使用するため支持地盤を損傷しないように行い、施工ジョイント部を余分に施工することにより、時間短縮・品質向上につながったと考える。
施工後1年以上経過しているが、表層部の流動化(わだち)や施工ジョイントのクラックは発生していないことから、上記で考慮したことが効果していると思われる。
本工事に関わった関係者に厚く御礼を申し上げると共に今後もより良い舗装を施工できるように努力して行きます。