鈴与建設株式会社 小早川謙吾
1.はじめに
平成 29 年度より導入された舗装工に情報通信技術(ICT :Information and Communication Technology)を全面的に導入する「ICT 舗装工」に基づき、静岡県清水港管理局発注「平成 29年度清水港新興津ふ頭用地整備事業(清水港)新興津コンテナヤード舗装工事(第 1 工区)及び(第 2 工区)」にて実施した、各プロセスの内、①地上型レーザースキャナー(TLS)による事前測量、③3 次元重機制御システムを搭載したグレーダー(3D-MC グレーダー)による施工、④ TLS による出来形管理における利点と注意点について報告するものである。
2.工事概要(1 工区、2 工区合算)
- 工事名
- 平成 29 年度清水港新興津ふ頭用地整備事業 (清水港)
新興津コンテナヤード舗装工事 (第 1 工区)及び(第 2 工区) - 工事箇所
- 静岡市清水区興津清見寺町 地先
- 工期
- 平成 29 年 9 月 27 日~平成 30 年 4 月 25 日
- 発注者
- 静岡県清水港管理局
- 工事内容
- 舗装工 12,671m2
3.使用機材
スキャナー:Leica C10
ソフト:Leica Cyclone
建設システム SiTE-Scope
4.TLS精度確認
精度確認は 20m~50m まで 10m 毎に TLS の密度設定を変更して行った。精度結果を表-1に示す。本工事では、下記の設定にて測定を実施した。
計測距離:40m (100 点/m2)
水平誤差: 0mm(規格値±20mm)
鉛直誤差: 2mm(規格値± 4mm)
5.事前測量及び出来形測量における実施結果
1) 利点
① 1 人で計測できる。
② 立会・検査時の計測が容易である。
③ 3 次元データにより、詳細な設計照査が可能となる。
④ 面管理による不良箇所の見える化で品質が向上する。
2) 注意点
図-2に点群データ画面を示す。
① 計測中に障害物(人、重機、車両)が通過、停滞すると点群として取り込んでしまう。また、その裏が死角となりデータ欠損が多く発生する。
② 路面の起伏も障害物となり採取データに低密度部分が発生する。
③ 新設アスファルト舗装面は採取データに低密度部分が発生する。
④ 雨やローラーの水等による湿った路面では、データ取得ができない。
⑤ 採取データをパソコンにて解析しなければならないため、その場での合否判定が不可能。
6.3D-MCグレーダーにおける実施結果
従来施工と ICT 施工との比較を図-3に示す。
1) 利点
① 水糸による検測がなくなり、安全性が向上しまた、人工が 21 人減り省人化に繋がった。
② ブレード高が自動制御されるため、仕上げまでの敷均し回数が減少し、施工日数が 1 日短縮し作業効率が向上した。また、材料分離がなくなり均一な仕上がりとなり品質向上に繋がった。
2) 注意点
①一般的に、トータルステーション(TS)と 3D-MC グレーダー間の通信を妨げる支障物の存在と急な設計変更への対応には注意しなければならないが、平坦かつ見通しが良い本工事においてはそのような事象は発生しなかった。
7.まとめ
事前測量及び出来形測量の点群データの取扱いでは、複数のソフトを使いこなさなくてはならないこと、また、データ量が大きいためハード側の不具合が頻発することから、従来業務と比較し非常に大きな負担を感じた。しかし、これらは、多くの経験をすることと、機械とアプリケーションの技術発展、及び基準類・規定類の改正により対応できるものだと考える。3D-MC グレーダーによる施工では、安全性向上、省人化、施工性向上、品質向上は明らかであった。i-Construction を含む ICT 施工は、今まさに黎明期である。まだまだ課題があるが、柔軟な発想により ICT 施工に積極的に取り組み、生産性の向上に繋げていきたい。