• 平成28年度
  • 最優秀賞

シックリフト工法における情報化施工技術の有効性について

鈴与建設株式会社 清水紀圭、佐々木亮太

1.はじめに

本工事は、国道1号と静清BPを結ぶ(主)静岡清水線の老朽化に伴う舗装修繕工事である。
舗装構成は、表層t=4㎝、基層t=6㎝、上層路盤t=19㎝(瀝青安定処理材・2層仕上げ)の打替え工事であり、施工箇所は変則の交差点で、施工時期は夏季となることから、施工方法、品質対策等について検討が必要とされた。
本報告はこれらの対策の一つとして情報化施工技術『 GNSSによる締固め管理システム 』が有効な手段の一つと考え、舗装品質の確保に努めたものである。

2.工事概要

工事名
平成27年度 清県舗第1号(主)静岡清水線(永楽町)舗装工事
工事箇所
静岡市清水区永楽町、江尻台町 地内
工期
平成27年7月 3日~平成27年9月28日
発注者
静岡市役所 清水道路整備課
工事概要
舗装修繕工事 延長122m、面積1,640m2



3.課題の抽出と対応策の検討

工事に先立ち実施した設計照査により、以下の課題を抽出し、対応策を検討した。
・交差点という現場環境を考慮すると、少なくとも基層面で交通開放する必要がある。
・日当り施工厚が厚く開放温度の未達による初期わだちの発生等、品質低下が懸念される。
・安全性、品質、コストを考慮すると、作業工程を短縮し、日当り施工量を確保したい。
上記課題に対する対応策として、上層路盤の施工方法に着目し、中温化アスファルトを併用したシックリフト工法(2層仕上げ→1層仕上げ)を採用し、品質確保、工程短縮を図った。また、掘削方法はバックホウ掘削から路面切削機による掘削に代替し、工程短縮を図った。
以上の対応策により、基層工程において、日当り165㎡に対し275㎡の見込みで110㎡の施工量改善。施工日数10日に対し6日の見込みで4日間の工程短縮を図った。

4.情報化施工技術の採用

採用した中温化アスファルトを併用したシックリフト工法は、仕様書、文献等に明確な転圧回数の規定がなく、当社の過去の工事においても、実績が希薄で品質データに乏しい。転圧回数の不足は締固め密度の低下に起因し、交差点形状が変則のため、転圧ムラの発生等、均一な品質が確保できない可能性がある。このため、上層路盤の施工において転圧回数、転圧箇所を視覚確認でき、面的な施工管理が可能な、情報化施工技術『締固め管理システム』を採用し、確実な品質確保を図った。
また、締固め管理システムには基準局にTSとGNSSがあるが、走行する車がTSの移動局への視準を遮ることが予測されたため、当現場ではGNSSを用いたシステムを採用した。
尚、締固め管理システムの運用は盛土工事の管理要領に準じて図-3のフローで実施した。


5.試験施工の実施

試験施工では、転圧回数、余盛量、施工温度等の施工データを得ることを目的とし、表-1に示す施工条件で、図-4のように転圧回数毎に3つのエリアを設けて試験施工を実施した。
試験施工の結果、表-2のとおり何れの工区も規格を満足する結果となったが、最も良好な結果を得られた第2工区を採用し、転圧回数を『初転圧7回 2次転圧11回』と規定した。

6.実施効果

締固め管理システムの効果の確認として、試験施工結果と本施工のコアを比較検証した。表-3 に示すとおり、規格値はいずれも満足し、厚さは試験施工値191㎜に対し195㎜。密度は試験施工値98.8%に対し99.1%とほぼ相違なく、非常に良好な施工結果を得ることができた。また、図-5 より施工箇所全域が締固められていることが確認できることからも、締固め管理システムは有効に活用できたと考えられる。
品質的に良好な結果が得られた反面、安全面ではオペレーターがシステムに不慣れなためモニター画面に集中し、周囲の確認が遅れる等の課題も浮き彫りとなったが、人感センサーの設置や経験を重ねることで解消される課題と考える。


7.おわりに

現在、盛土工事において締固め管理システムが実用化され数年が経過しているが、盛土材料の含水比に影響される盛土工事と比較し、舗装工事では、プラントから安定した品質の材料を供給できるため、品質の均一化が図れ、締固め管理システムの運用に、より適していると考えられる。また、本工事では、従来方法で管理を行ったが、将来的には、同様の材料、舗装構成において施工する場合は、施工実績より回数規定による管理に移行することが、情報化施工技術の目的である生産性の向上に繋がると考える。今後も実績データを積み重ね、実用的な技術運用がされるよう取組んでいきたい。