• 平成28年度

経年劣化による床版補修について

株式会社 エコワーク  出雲 貴久

1.はじめに

本工事は大井川に掛る谷口橋((主)島田吉田線)昭和9年(右岸側の一部)・昭和32年に架設された橋梁であり、橋面防水工、舗装工の工事を行い長寿命化を図る事を目的とした工事でありました。

2.工事概要

工事名
平成27年度(主)島田吉田線谷口橋防災・安全交付金(道路施設長寿命化緊急対策 (県道橋梁補修))工事(舗装工)
工事箇所
島田市道悦島地内
発注者
静岡県島田土木事務所
工事内容
施工延長L=126m 施工面積A=660㎡
主要工種
・路面切削・舗装版取壊し・表面処理(ウォータジェット)
・断面補修(ポリマーセメントモルタル・ジェットコンクリート)・橋面防水
・アスファルト舗装・区画線

3.施工前の床版調査

本工事は前年度工事(平成25年度)において、橋面舗装健全度調査(電磁波による調査)が行われており、その結果より昭和9年に架設された区間においてアスファルト舗装と床版の境界面において異常がある信号が確認されていた。


異常信号①:アスコン層底面の砂利化、床版上面の土砂化等
異常信号②:かぶり不足(かぶりが薄い)、鉄筋の露出
この事により、発注段階から異常個所のあった代表箇所の3箇所ににおいて、1m×1mの大きさにて開削調査が指示されていた。

4.床版調査と結果


開削調査により、床版面より鉄筋が露出している、また床版面の不陸・劣化・滞水がみられた。

6.調査結果による補修方法

1・補修方法として、鉄筋が舗装路面より6㎝程度下にある為、路面切削によりt=5㎝程度を切削し、その後残層を人力にて撤去、床版面をすべて露出後打音検査等により不良箇所を撤去する。
2・コンクリート補修が必要な箇所は、弱体化したコンクリートや補修材との密着を向上させるためウォータージェット工法により、コンクリート面の清掃及び撤去を行う。
3・不良箇所及び不陸箇所・鉄筋かぶり厚が不足している箇所をコンクリート補修材にて補修する。

7.補修工法の材料と特徴

ウォータージェット工法

特徴:圧力調整が可能な、特殊な機械を用い水を噴射しコンクリート面の不純物及び劣化部を同時に撤去・清掃

断面補修工法

材料(代表):繊維補強超速硬セメントモルタルエポキシボンドセット

施工方法:左官による敷均し

特徴:断面補修工法は、床版面の不陸修正や段差補修を行う工法である。
本箇所では、薄層による補修が見込まれており、床版面との密着も重要不可欠であり、この工法では、ボンド・接着剤・プライマーと薄層施工時における密着性の問題や、既設床版面のクラック・マイクロクラックにも補強を行い補修できる工法となり、本工事目的にあった材料・工法である。

8.現場着手後の問題と対策

現場施工にあたっては、予定通り路面切削機にて舗装路面をt=5㎝切削し、その後、人力及びブレーカーにて残層の撤去を行ったが、想定以上に床版の状態が悪く、また鉄筋の露出が多く、急遽床版補修の再検討が必要となりました。
再検討が必要となった理由としては、断面補修材は薄層用で、厚く施工する場合には材料が適していない。(骨材が入っていないため)

対策結果①
補修厚約t=10cm~t=0㎝と薄層がある箇所においては、断面補修材にて補修を行った。

対策結果②
補修厚が最低厚さt=5㎝以上の箇所はジェットコンクリートでの施工を行った。

9.おわりに

現状床版状態は、事前調査だけでは床版状態の把握には限界があり、開削後でなければ全状態を把握する事は困難でした。
今回は想定外の床版状態の箇所において、ジェットコンクリートの材料が該当し、また、手配が出来たため、工期及び規制期間を延長する事なく施工完了する事が出来ました。
近年日本の経済成長により作られた橋梁においては、経年劣化による維持修繕が必要な時期となり、大小様々ではあるとは思いますが、補修が必要な橋梁が多々あると感じました。今後の施工においても、補修が必要な橋梁については、ウォータージェット・断面補修工法(薄層用)・ジェットコンクリート(または普通コンクリート)工法が極めて有効な工法であったと感じる結果でした。